2.沿革と概要

 当地域の排水は旭山丘陵地帯より海岸に向かい緩傾斜をなし、幹線排水路である定川本線の平水位より低いところが殆どのため水害の常習地帯であった。これらの排水改良を解消すべく昭和26年に国営定川農業水利事業が着手され、その推進母体・負担母体として又造成施設の維持管理を目的に昭和28年定川出来川沿岸土地改良区が設立された。

 

  ※ 定川地区国営かんがい排水事業

   工   期   自昭和26年  至昭和45年

   総事業費   3,876,000千円

   事業概要   排水機場 7ヶ所新設、排水路 L=73,843mの改修

 

事 業 概 要

 本事業の関係地域は鳴瀬川と江合、北上両川とに挟まれた一円で、2市7町に跨り、その面積22,000ha(水田面積9,600ha)に及ぶ。地域中央部を南北に走る旭山丘陵地帯を境として東西の二団地に区分され、水利上利害相反する関係で排水の不良を嘆き乍らも根本的対策を講ぜられることなく、一度降水出水すれば西部区域一円は、江合・鳴瀬両川の水位上昇に伴い明治水門及び鞍坪隧道の逆水門扉が閉鎖され、地区内排水は僅に青木定盤より定川に5m3/secの排除に制約される為に湛水による地区農作物に与える被害は甚大なものがあった。他方東部区域は丘陵地帯より海岸に向い緩傾斜をなし、田面標高+0.20m〜+1.30mであり定川の平水位より低いところが可成の部分を占め常時排水不良なるに加えて定川の荒廃が著しく一層の排水不良を助長していた。本事業は之等の排水不良を抜本的に改良するため、昭和22年調査に着手し国営事業として昭和26年着工、昭和45年完工に至った。事業の概要を大別すれば西部地区出来川筋の改修と東部定川筋の改修とである。出来川筋は本事業地区外に11kuの流域を有する出来川の洪水Q=41.81m3/secを直接江合川に放流出来るように改修した。尚江合川の外水位が上昇し一時排水不能となるので非常放水工を設置し名鰭干拓地へ放流する。地区内出来川両岸の耕地の排水は青木川及び鞍坪排水路に集水し一旦合流させ夫々所定の比に分水して鞍坪排水路により鳴瀬川へ又青木制水門を経て定川に排水出来るよう改修された。尚鞍坪排水路の鳴瀬川への排水は外水位上昇に伴い鞍坪隧道閉扉後は一時排水不能となるので分水工により青木川へ10.68m3/secを分水し定川へ排水されるが青木制水門においてQ=25.0m3/secに制約されるので残余の排水は出来川と同様に名鰭干拓地に貯溜し江合・鳴瀬両川の水位低下を持って排除するものとする。定川は下流の排水幹線として改修され沿岸地帯には夫々排水機場を新設した。かように上下流不可分の一体としての排水改良を行ない住古の湛水被害を除去したのみならず進んで綜合的土地改良事業を行なうべき基盤が確立された。本地区受益面積9,600陌(水田)に対し米約6,140屯の増産を見るに至った。

 

各市町別受益面積

市町名 種  別 受益面積 摘  要
石 巻 市 排水改良 501ha  
河 南 町 1,561ha  
鳴 瀬 町 63ha  
矢 本 町 1,572ha  
涌 谷 町 814ha  
小牛田町 1,515ha  
南 郷 町 2,794ha  
古 川 市 559ha  
松 山 町 5ha  
合 計 9,384ha  

 

 

 

主 要 工 事 の 内 容

排  水  路

 

排水路名

全延長(m) 排水量(m3/sec) 支配面積(Ku)

 

定川本線

11,464 58.83 94.28

出来川本線

13,176 41.81 41.05

青木川

14,503 25.00 35.58

鞍坪排水路

15,496 31.87 46.80

中江川

1,200 8.61 11.28

出来川上流部

4,855 35.91 34.33

 

定川支線

2,081 3.35 4.85

中江川

2,038 5.86 5.53

赤井堀

5,967 7.02 12.62

十一号排水路

4,085 3.00 3.83

眼鏡筒排水路

906 1.33 3.79

蛇田機械排水路

952 3.79 10.11

筍堀排水路

2,313 3.91 8.75

八号排水路

1,354 3.11 8.79

 

排  水  機  場

機場名 口径(m/m) 出 力 動 力 揚程(m)

計画排水量

(m3/sec)

型 式 台 数

支配面積

(Ku)

摘   要

 

大曲排水機 500・700 20kw・30kw モーター・モータ 2.64・2.40 0.44・0.76 軸  流 1・1 3.70 定 川 本 線
柳目排水機 500・700 15kw・30kw モーター・モータ 2.30・2.40 0.36・0.84 1・1 3.40
五味倉排水機 400・700 15kw・40ps モーター・ディーゼル 2.70・2.30 0.32・0.78 1・1 3.32
南区排水機 400・600 15kw・40ps モーター・ディーゼル 2.67・2.30 0.245・0.655 1・1 3.80
中区第一排水機 900・900 60kw・70ps モーター・ディーゼル 2.12・2.18 1.31・1.30 1・2 8.75
中区第二排水機 600 30kw モーター 2.45 0.60 1 1.50
田沼排水機 600・300 75ps・7.5kw ディーゼル・モーター 2.91・1.02 0.94・0.2 斜流・軸流 1・1 2.05 出来川本線
青木揚水機 300 15kw モーター 3.23 0.17 渦流 1 0.44 青 木 川
蛇沼揚水機 600 30kw モーター 3.00 0.78 軸流 1 3.00 鞍坪排水路
鷹来揚水機 350 25kw モーター 4.13 0.25 渦流 1 0.90 青 木 川
                     

広渕排水機 1,100 60kw モーター 1.65 2.140 軸流 1 8.79 定 川 支 線
定川支線排水機 1,300 160ps ディーゼル 2.25 3.35 1 4.85 定 川 本 線
蛇田排水機 900・800 85ps・55kw ディーゼル・モーター 2.75・2.85 3.19 1・1 10.11 北 上 運 河
眼鏡筒排水機 800 65ps ディーゼル 2.48 1.41 1 3.79
                     

上区排水機場 700・900 40kw・71ps モーター・ディーゼル 1.80 2.46 軸流 1・1 5.75 中 江 川
釜排水機場 500・900

1,000

15kw・45ps

40ps

モーター

ディ-ゼル

1.50 3.05 軸流 1・1

1

3.87 定 川 本 線
         
  事業費 国 営 施 行 3,875,370,000円  工 期 昭和26年度着工  昭和45年度完工
県 営 施 行 542,760,000円  工 期 昭和33年度着工  昭和42年度完工
4,418,130,000円  

 

 

※ 国営附帯県営かんがい排水事業

    工   期  自昭和33年   至昭和42年

    総事業費  542,000千円

    事業概要  排水機場 4ヶ所新設、排水路 L=19,700m改修

 

※ 団体営かんがい排水事業

    工   期  自昭和33年   至昭和34年

    総事業費  64,000千円

    事業概要  排水機場 2ヶ所新設

 

 

事 業 概 要

 広淵沼地区は、寛文年間より当地域の用水溜池として築造された広淵沼を大正9年より県営事業として干拓に着手し、面積658ha 総事業費121万円で昭和3年に竣工し、その後産業組合が維持管理してきたが昭和31年設立の広淵沼土地改良区に継承された。

 一方用水面については、昭和7年に遠田・桃生・牡鹿三郡及び石巻市水利組合連合を組織し用水改良事業が施行されたが、基幹用水施設は老朽化による機能低下に加え農業形態の進展に伴う水需要の増大、用水不足が著しく、そのため維持管理に多大な労力を要するとともに、抜本的な基盤整備ができず生産性の低い不安定な営農を余儀なくされていた。

 以上のような状況を解消すべく昭和46年に国営河南農業水利事業が着手され、その推進母体・負担母体として又造成施設の維持管理を目的として当時の大溜池、矢本町、南郷(一部)、名鰭土地改良区及び遠田・桃生・牡鹿三郡土地改良区連合を解散し、昭和44年4月1日北上川河南三郡土地改良区が設立された。

 

 

※ 河南地区国営かんがい排水事業

 工   期  自昭和46年  至昭和56年

    総事業費  9,315,000千円

    事業概要  揚水機場6ヶ所、用水管理センター

                基幹排用水路 L=21,200mの新設改修

 

 

事 業 計 画 概 要

 

1.計画決定年度    昭和43年度

2.地    域      宮城県石巻市、矢本町、河南町、涌谷町、南郷町 1市4町

3.受益面積及び戸数    

           ・受益面積

市町名\地 目 水田 その他
石巻市 10.8ha 10.8ha
矢本町 1,725.1ha 1,725.1ha
河南町 3,307.3ha 3,307.3ha
涌谷町 118.9ha 118.9ha
南郷町 233.0ha 233.0ha
5,395.1ha 5,395.1ha

 

         受益戸数   4,644戸

 

         事業目的別面積

市町名\地目 水田 その他
かんがい事業 5,395.1ha 5,395.1ha
排水事業 905.3ha 905.3ha

                                                     排水改良は全て用水改良と重複

 

4.一般計画

   (1)事業の目的

 本地区の用水については、主水源を旧北上川に依存し和渕・佳景山、両揚水機場によりかんがいしているが、設置後30年以上経過し、能力が低下し、加えて45年に完成した、定川排水事業の効果発生に伴う、単位用水量増加のため用水不足が著しく、施設も旧態依然のもので用水配分の適切を欠く。このため、幹・支線を堰上げ70ヶ所余の応急揚水機による還元利用と番水により辛うじて、対処している。

 又排水について地区北部の905haは定川排水事業の地区外で降雨時には、旧北上川の水位が長期に亘り上昇し、佳景山・笈入両機場により機械排水するが、老朽化による能力不足のため40〜50m/mの降雨で湛水被害を生ずる。

 上記の基幹用排水施設の著しい欠陥を是正するため揚水機場及び幹線用排水路を整備増強し、県営かんがい排水・圃場整備と併せて、本地区の土地基盤整備を行なうものである。

 

   (2)用水計画

1.計画基準年  昭和42年

(かんがい期間 有効雨量確率1/44年旧北上川渇水位確率1/20年)

 

2.かんがい期間

  しろかき期間  5月10日〜5月24日

  かんがい期間  5月10日〜9月 6日

  かんがい方式  湛水かんがい

 

3.単位用水量

系統名 \ 項 目

種別

かんがい

面積

平均単位用水量 備考
普通期 代かき期
矢本幹線用水路 農業用水 3,547.3ha

(19.7)

17.6mm/day

(140)

125mm/day

代かき日数

15日

三郡幹線用水路 1,496.3ha

(21.2)

19.1

(140)

127

笈入幹線用水路 351.5ha

(19.1)

17.0

(140)

123

  5,395.1ha

(20.0)

17.9

(140)

125

( )は

最大値

 

     イ、揚水機

項 目

名 称

位   置 揚水量 揚  程 揚  水  機 原  動  機
実揚程 全揚程 型式 口径 台数 型式 口径 台数
和 渕

宮城県桃生郡河南町

和渕字佐沼川

6.545

m3/s

4.1m 4.8m

立軸

斜流

φ900m/m 4 モーター 125kw/18p 4
中 山

宮城県桃生郡河南町

鹿又字秋葉前

9.169 6.0 6.8

φ1,000m/m 4 220kw/18p 4
笈 入

宮城県桃生郡河南町

和渕字小金袋

2.360

用6.178

排2.418

用7.1

排3.4

横軸

斜流

φ1,000m/m

φ1,350m/m

2

2

240kw/6p

200kw/8p

2

2

前谷地

宮城県桃生郡河南町

前谷地字石神下

3.936 5.7 7.0

立軸

斜流

φ900m/m 2 200kw/14p 2
柏 木

宮城県桃生郡河南町

広渕字五工区南

0.427 3.654 4.7

横軸

斜流

φ450m/m 1 30kw/10p 1
小 松

宮城県桃生郡矢本町

小松字館下

3.574 3.9 4.5

立軸

斜流

φ900m/m 2 120kw/18p 2

 

項目

名称

位置

流域

面積

受益

面積

排水量

計画

揚  程

排 水 機

原 動 機

運転

時間

用排区分

実揚程

全揚程

型式

口径

台数

型式

動 力

台数

笈 入

宮城県桃生郡河南町

和渕字小金袋

ku

14.05

ha

905.3

m3/s

14.0

m 

2,418

m 

3.4

モーター

m/m

φ1,350

φ1,000

 

2

2

 

横型

籠型

 

200kw/8p

240kw/6p

 

2

2

h 

32.0

用排兼用

 

      ロ、用水路

項 目

名 称

支配面積 通水量 延長 構造 勾配 主要構造物 備考
総延長 開渠 その他
矢本幹線用水路 3,547ha 7,776/1,870 11,404m 6,775m 4,629m 鉄筋コンクリート、フリューム 1/4,700

開渠・暗渠

サイホン・トンネル

 
笈入幹線用水路 351 2,360/1,358 819 24 795 PC管 1/1,000 開渠・分水工  
三郡幹線用水路 1,496 6,978/3,936 4,196 3,053 1,142 フリューム、PC管 1/1,400 開渠・サイホン  
和渕幹線用水路 - 2,360/2,360 1,383     コンクリート矢坂柵工 1/2,000 開渠・分水工  

 

      ハ 排水路

項  目

系統名

受 益

面 積

流域面積

基準

雨量

最大

流出量

全排水量

山 地

平 地

山地

平   地

自然排水

機械排水

二間堀排水路 905.3ha 2.2ku 11.85km3 138.5mm 31.514m3/s - - 14,000m3/s

 

 

 

事  業  経  緯
年   月   日 事        項

 

昭和43年 〜    

昭和45年 4月 1日

昭和46年 6月23日

昭和46年 8月18日

昭和46年10月 1日

昭和47年 1月21日

昭和47年 1月28日

昭和47年 5月22日

昭和47年 8月12日

昭和57年 3月31日

昭和57年 3月31日

 

 国営直轄地区として調整

 全体実施設計

 国営土地改良事業施行申請公告

 国営土地改良事業施行申請

 河南農業水利事業所開設

 国営土地改良事業計画決定

 国営土地改良事業計画書公告縦覧

 国営土地改良事業計画確定

 工事着工

 全工事完了

 河南農業水利事業所閉所

 

農業用管理システムの導入

  システム概要(無線電送方式による集中監視・計測・制御)

 石巻市ほか、2郡4ヶ町にかんがいされる河南地区の揚水機、分水工等の設備は、合理的かつ、安全に管理運営されなければなりません。そこで、用排水系統の合理的再編成を図り、需要に応じた施設機能の適切な管理・運営を行うべく、総合施設運営管理による「計測・制御・積算・監視機能」の集中化により、効果的な運営管理を行うため、この農業用水管理システムが導入されました。

 システムは、笈入、和渕、中山、前谷地、柏木、小松の6ポンプ場及び新田分水工を子局とし、さらに下小松分水工、和渕幹線分水工を孫局として、笈入揚水機場敷地内に建設した用水管理センターにて集中監視・計測・制御を行うもので、用水管理センターと笈入局及び子局と孫局間は施設搬送回線、その他の子局と用水管理センターは400MHz帯の無線回線で結ばれている。

 子局は、中継端子盤、現場監視盤と、用水管理センターとの間で監視・計測信号及び制御信号の受け渡しを行うテレメータ・テレコントロール装置、孫局との情報交換を行う対孫局装置等の機器から構成されます。

 用水管理センターは子局から伝送されてくるデータの受信、制御信号の送信を行うテレメータ・テレコントロール装置、受信データを表示展開するための中央監視盤・受信データに対し、各種演算を行ない記録するデータ処理装置及び遠隔制御を行う操作卓等により、構成されます。

 

※ 国営附帯県営かんがい排水事業

      工   期  自昭和48年  至昭和63年

      総事業費  4,838,000千円

      事業概要  末端用水路 L=51,400mの新設改修

 

 

事 業 概 要

 本事業地区は、宮城県北東部太平洋岸に位置し、北は、旧北上川と江合川に接し、南は北上運河 に至る南北16km、東西は旧北上川より旭山丘陵地帯に至る12kmの地域で、石巻市ほか2郡4ヶ町にまたがり、5,000ヘクタールの水田を有する平地農村地帯である。地域の約6割は、国営定川農業水利事業の受益地として、宿題の常習排水不良地帯から脱却し、その効果は著しいものがある。

 また、本地域の周辺は、石巻臨海工業地帯として、現在発展途上にあり、石巻市はもとより、仙台市・塩釜市の経済圏内にある。従って、農産物の供給基地として発展すべき条件を具備しており、農業に対する依存度が極めて高い地域である。

 一方、地区の基幹用水施設は、老朽化による容量低下に加え、農業形態等の進展に伴う水需要が増大し、用水不足が著しく、現在排水路をせき上げ、応急ポンプ揚水によって、かろうじて用水を確保している状況である。

 なお、定川排水事業の地区外であった約530ヘクタールの北部地区は、現在、佳景山・笈入両排水機により旧北上川に排除しているが、施設の老朽化、能力不足等により、湛水被害を被っている現状である。

 そのため、維持管理に多大な労力を要するとともに、用・排兼用水路であるため抜本的な基盤整備ができず、生産性の低い不安定な営農を余儀なくされている。

 本事業は、以上の状況を抜本的に改良すべく、別途国営事業として、基幹用排施設の新設・改修を行い、併せて本事業により末端用排水施設(用排水路約51.4km)の改修を実施し、用・排水系統の一合理的再編成を図るとともに、農業生産基盤を整備し大型機械化営農による生産性の向上ならびに農業経営の近代化を図るものである。

 なお、本事業は昭和49年度着工以来、15ヶ年の歳月と4,838百万円の事業費で、昭和63年度に完了したものである。

 

工事の着手及び完了の予定時期

     着 手 予 定   昭和48年度

     完 了 予 定   昭和57年度

 

 

事業費の総額及び内訳

   総  額  3,250,000千円

             内  訳

工 事 費 3,047,000千円
工事雑費 43,000千円
事 務 費 160,000千円

 

   関連事業費 11,500,000千円

             内  訳

国営かんがい排水事業 4,200,000千円
県営ほ場整備事業 7,300,000千円

 

農業用管理システムの導入

  システム概要(無線電送方式による集中監視・計測・制御)

 石巻市ほか、2郡4ヶ町にかんがいされる河南地区の揚水機、分水工等の設備は、合理的かつ、安全に管理運営されなければなりません。そこで、用排水系統の合理的再編成を図り、需要に応じた施設機能の適切な管理・運営を行うべく、総合施設運営管理による「計測・制御・積算・監視機能」の集中化により、効果的な運営管理を行うため、この農業用水管理システムが導入されました。

 システムは、笈入、和渕、中山、前谷地、柏木、小松の6ポンプ場及び新田分水工を子局とし、さらに下小松分水工、和渕幹線分水工を孫局として、笈入揚水機場敷地内に建設した用水管理センターにて集中監視・計測・制御を行うもので、用水管理センターと笈入局及び子局と孫局間は施設搬送回線、その他の子局と用水管理センターは400MHz帯の無線回線で結ばれている。

 子局は、中継端子盤、現場監視盤と、用水管理センターとの間で監視・計測信号及び制御信号の受け渡しを行うテレメータ・テレコントロール装置、孫局との情報交換を行う対孫局装置等の機器から構成されます。

 用水管理センターは子局から伝送されてくるデータの受信、制御信号の送信を行うテレメータ・テレコントロール装置、受信データを表示展開するための中央監視盤・受信データに対し、各種演算を行ない記録するデータ処理装置及び遠隔制御を行う操作卓等により、構成されます。

 

※ 国営附帯県営かんがい排水事業

      工   期  自昭和48年  至昭和63年

      総事業費  4,838,000千円

      事業概要  末端用水路 L=51,400mの新設改修

 

 

事 業 概 要

 本事業地区は、宮城県北東部太平洋岸に位置し、北は、旧北上川と江合川に接し、南は北上運河 に至る南北16km、東西は旧北上川より旭山丘陵地帯に至る12kmの地域で、石巻市ほか2郡4ヶ町にまたがり、5,000ヘクタールの水田を有する平地農村地帯である。地域の約6割は、国営定川農業水利事業の受益地として、宿題の常習排水不良地帯から脱却し、その効果は著しいものがある。

 また、本地域の周辺は、石巻臨海工業地帯として、現在発展途上にあり、石巻市はもとより、仙台市・塩釜市の経済圏内にある。従って、農産物の供給基地として発展すべき条件を具備しており、農業に対する依存度が極めて高い地域である。

 一方、地区の基幹用水施設は、老朽化による容量低下に加え、農業形態等の進展に伴う水需要が増大し、用水不足が著しく、現在排水路をせき上げ、応急ポンプ揚水によって、かろうじて用水を確保している状況である。

 なお、定川排水事業の地区外であった約530ヘクタールの北部地区は、現在、佳景山・笈入両排水機により旧北上川に排除しているが、施設の老朽化、能力不足等により、湛水被害を被っている現状である。

 そのため、維持管理に多大な労力を要するとともに、用・排兼用水路であるため抜本的な基盤整備ができず、生産性の低い不安定な営農を余儀なくされている。

 本事業は、以上の状況を抜本的に改良すべく、別途国営事業として、基幹用排施設の新設・改修を行い、併せて本事業により末端用排水施設(用排水路約51.4km)の改修を実施し、用・排水系統の一合理的再編成を図るとともに、農業生産基盤を整備し大型機械化営農による生産性の向上ならびに農業経営の近代化を図るものである。

 なお、本事業は昭和49年度着工以来、15ヶ年の歳月と4,838百万円の事業費で、昭和63年度に完了したものである。

 

工事の着手及び完了の予定時期

     着 手 予 定   昭和48年度

     完 了 予 定   昭和57年度

 

 

事業費の総額及び内訳

   総  額  3,250,000千円

             内  訳

工 事 費 3,047,000千円
工事雑費 43,000千円
事 務 費 160,000千円

 

   関連事業費 11,500,000千円

             内  訳

国営かんがい排水事業 4,200,000千円
県営ほ場整備事業 7,300,000千円

 

           効   用

区     分 増加見込純益額 増加見込所得額 備    考
作  物 349,119千円 397,666千円  
営農労力 779,872千円 779,872千円  
維持管理費 72,656千円 72,656千円  
その他      
1,201,647千円 1,250,194千円  

 

計 画 の 要 旨

 (1)事業地域及び地積

(昭和63年10月現在)単位:ha         

地  目

市町村名

山林 原野
石  巻  市 7.8 - - - 7.8
矢  本  町 1,663.1 - - - 1,663.1
河  南  町 2,977.6 - - - 2,977.6
涌  谷  町 118.9 - - - 118.9
南  郷  町 233.0 - - - 233.0
5,000.4 - - - 5,000.4

 

 (2)一 般 計 画

 

分類 種  別 計  画  諸  元

 

受益面積

計画基準年

単位用水量

 

 

全用水量

かんがい期間

 

 

5,000.4ha

昭和42年

かんがい期平均日減水深 10〜25m/m

しろかき水深 90〜140m/m

 

しろかき期 15,071m3/s   普通期 13,380m3/s

5月10日 〜 9月6日  120日

 

 

受益面積

流域面積

計画基準雨量

単位排水量

計画排水量

 

 

530.0ha

8.34Ku ( 山地2.20Ku  平地6.14Ku )

138.5m/m ( 2日連続雨量 )

0.02243m3/s/ha

8.97m3/s

 

 

主  要  工  事  の  内  容

用・排水路
名   称 支配面積 計画水量 延   長 構    造
用水路工 ha m3

L=47,946m

17路線
和渕用水路 236 0.682 L=1,098 鉄筋コンクリートフリューム
笈入用水路 352 1.002 L=1,874
西谷地用水路 315 0.940 L=3,227
南郷用水路 279 1.062 L=4,144
名鰭用水路 119 0.334 L= 833
赤羽根用水路 434 1.291 L=6,279
赤羽根第2用水路 114 0.309 L= 953
鹿又用水路 512 1.375 L=4,280 管  水  路
谷地中用水路 415 1.126 L=4,332

管  水  路

鉄筋コンクリートフリューム

中埣用水路 488 1.654 L=5,430
赤井用水路 272 0.749 L=2,486
中区用水路 267 0.754 L=3,318
新田用水路 145 0.421 L= 816
下小松用水路 515 1.502 L=3,171
横沼用水路 185 0.713 L=2,226 鉄筋コンクリートフリューム
鹿妻用水路 251 0.765 L=3,037
道地用水路 120 0.392 L= 392
排水路工     L=3,418 3路線
二間堀排水路 530 8.97 L= 930 連結ブロック
照江排水路 208 4.14 L=1,503 積ブロック
河原排水路 196 3.45 L= 985

 

※  その他の県営・団体事業(ほ場整備、かんがい排水等)

   工  期  自昭和52年  至平成6年

   総事業費  9,186,000千円

   事業概要  排水機場3ヶ所新設、用排水路 L=64,763mの新設

           改修、55施設の整備改修、団圃3地区 A=46.6ha

※ 県営基幹水利施設補修事業による農業用水管理設備機能の追加

      工    期  自平成7年  至平成11年

    総事業費  774,000千円

    事業概要  国営笈入揚水機場除塵設備の追加、国営二間堀排水路の護岸補修

       国営用水管理設備の高度化及び管理システム機能の追加

 

 尚、平成4年より現在まで完工地区を含めて8地区で県営圃場整備事業(20,245,000千円 A=1,014.2ha)を実施中であり、今後とも農業生産基盤を整備することにより、大型機械化農業を可能にし、農地の汎用化による生産性の向上並びに農業経営の近代化、担い手育成を図るものである。